御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
どうしても知りたくなかった。
たまたま乗った沿線上に、自宅があったというのもあるし、なにより鳥飼にシンパシーのようなものを感じていたのかもしれない。
なんとなく、おせっかいとわかっていても、声を掛けずにはいられなかったのだ。
マンションのドアを開けて、鳥飼を招き入れた。
「どうぞ」
「ここで待つよ」
早穂子の誘いにうなずきつつも、部屋に上がるつもりはないようだ。
玄関の中で立ち止まる。
「中で待ってたら? お茶くらい出すけど……」
早穂子がそういうと、鳥飼が少し困ったように笑った。
「そういうことは言わないほうがいい」
「え?」
「俺も一応男だから」
鳥飼はやんわりと微笑んで、眼鏡の奥の目を細める。
『男だから』
その言葉に、隙を突かれた気がして、早穂子の頬はカーッと赤く染まった。
頬だけではない。耳や首まで熱くなる。
「あ……そっか」