御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
やたら落ち着いている鳥飼の性質のおかげで、早穂子は彼に緊張しないのだと思っていたのだが、『男だから』と言われると、途端に意識してしまったのだ。
(そうよね……付き合ってるわけでもないのに、部屋の中に入れるのは……駄目よね……!)
早穂子は、「じゃっ、じゃあ、ここで待っててください!」としどろもどろで言うと、バタバタとキッチンへと向かって行った。
鳥飼が肩を震わせてうつむき笑っていたような気がするが、気が付かなかったことにしたい。
「はぁ……」
我ながら、うかつすぎる。
(恥ずかしい……)
洗面台で手を洗った後、小さくため息をついて、使っていなかった新しいタッパーウェアを出した。
総菜は、牛肉の赤ワイン煮込み、かぼちゃとさつまいものグラタン、トマトとモッツァレラのカプレーゼ、じゃがいもとオリーブのツナサラダと盛沢山だった。いろどりもよく、どれもおいしそうだ。
具材を崩さないように、できるだけ丁寧につめていると、リビングのソファーの上に置いたバッグから、着信を知らせるバイブレーションが響くのが聞こえた。