御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(頭が真っ白だ……燃え尽きた……)
近くのカフェに入って、ぼんやりと、とりあえず頼んだ紅茶の湯気を眺めていると、じんわりと目に涙が浮かんだ。
ようやく感情が追いついてきた、そんな気がする。
(いけない、いけない……)
慌ててパチパチを瞬きをして、涙を乾かし、ひと口だけお茶を飲む。
自分から言い出したことだ。後悔はない。
言いたいことは言った。なにひとつ、隠さなかった。
早穂子は彼に自分の心をすべてさらけ出せたのだ。
(そうよ……嘘はない。私は幸せだった)
早穂子が部屋を出たのは、始を見送りたくなかったからだ。
目の前で彼の背中を見たくなかった。こっそりと出て行ってほしかった。
最後のあがき、といえばそうなのかもしれない。
「……はぁ」
口を開けばため息しか出ない。
好きで好きでたまらない相手と離れるのだから、当然だろう。
(仕事……どうしよう。続けていいかな……いや、無理かな)