御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

転職して一年もせず辞めるなんて不本意だし、そもそも山邑リゾートはとてもいい職場だ。仕事も好きだし、環境もいい。

辞めたくないという気持ちが大きいが、だからと言って、副社長である始と関係を持った以上、仕事は辞めるのがけじめなような気もする。

(けじめ……か)

ふと、思いついたことがあった。

早穂子は目の前の紅茶をひと口だけ飲んで、そのままカフェを出る。



数時間後。あたりはすっかり暗くなっていた。

早穂子はとぼとぼと歩いて、自分の住むマンションへと向かう。

ぼうっとする頭で、なにげなく自分の部屋を外から見上げた。

「あれ……」

部屋の電気がついている。

まさかと思いながら、慌ててエレベーターに乗り込み自分の部屋へ駆け足で向かう。

ドアノブを引いた瞬間、息が止まりそうになった。

玄関に、自分が出て行った時と同じように始の靴がある。
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