御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「なんでいるんですか!!!」
もつれる足で部屋の中に飛び込むと、一応スーツに着替えた始が、しょぼんとベッドの上に座っているのが見えた。
早穂子の悲鳴に似た声に、彼ははっと顔を上げて、それから早穂子を見て目を大きく見開く。
「なんで髪、短くなってるの!!!!!」
先に問うたのはこちらの方なのに、数倍大きな声を出されて、疑問が引っ込んだ。
「えっと……なんでって……自分的な……けじめかなって……」
早穂子はおどおどしつつ答える。
そう、早穂子は長かった髪を、ばっさりと切り落としていた。
カフェを出て向かった先は美容院で、首がすっきりと見えるくらいの、ショートボブにしてしまったのだ。
こんなに短くしたのは小学生の時以来で、少し恥ずかしくもある。
照れ隠しに首の後ろを手のひらで撫でていると、
「けっ、けじめっ!?」
始は信じられないと言わんばかりに目を白黒させながら、ズカズカと近づいてきて、早穂子の両肩をつかんで引き寄せた。
「君がきれいな髪を切るのが、けじめ!?」