御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「始さんは……その、こんなこと気にしなくていいんですよ」
これは未練を断ち切りたいと思う自分なりのけじめで、始へのあてつけだとは思われたくない。
早穂子がへらっと笑うと、
「やめてくれ! 死にたくなるから!」
「っ……」
彼の口から出た、『死にたくなる』という言葉は、早穂子に相当な衝撃を与えた。
「ご……ごめんなさい」
小学生から兄の代わりの人生を生きて来た始に、こんなことを言わせるなんて思ってもみなかった。
早穂子が謝罪の言葉を口にすると始は激しく首を振る。
「違う……違うんだ。君はなにも悪くない。言っただろう……悪いのは全部俺で、俺は最初から君にずっと甘えてばかりで……ずっと……」
始はそのまま早穂子の背中に腕を回す。
「なぁ……愛ってなに?」
ぎゅうっと抱きしめられて、息が止まりそうになった。
同時に、彼の腕から困惑が伝わってくる気がした。
「わかりません……」
「君は俺を愛していると言ったじゃないか……!」
始が絶望的な声で叫ぶ。