御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「今までのこと、嘘だって思ってるわけじゃないんです」
「じゃあどうして……」
「始さんがつらそうだから」
「俺が、つらい……って」
始がどこか困ったようにつぶやきながら、軽く息をついた。
「ああ……そうだね。そうだった。俺を愛さないででなんて、今更なことを言ったばかりだった……」
始は、「馬鹿だなぁ……俺。やっぱり話すんじゃなかった。そのせいで、今から振られるわけだし」
言葉は茶化していたけれど、始はどこか気が抜けたように、薄い笑いを浮かべていた。
「でも私は、始さんの気持ち、聞けて良かったです」
そう、よかったのだ。
彼が幼いころから抱えていた苦しみを、打ち明けてくれた。
そのことに早穂子は意味があると思った。
早穂子は彼の鎖骨のあたりに顔をうずめる。
「ね、始さん。次は、寂しさを埋めるためじゃなくて、自分で、自分の幸せをつかんでください。あなたなら、絶対に幸せになれますから」