御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そう、今日は鶴田とゆずの結婚式だ。
ふたりが付き合い始めて二年と半年――大安吉日の今日、都内のレストランでガーデンウエディングが行われ、早穂子も当然招待を受け、式に参加しているというわけだ。
「おふたりさん、おめでとう」
早穂子の背後から、すらりとした男が近づいてくる。
「鳥飼さん」
「蓮杖さん。ひさしぶり」
スーツ姿の鳥飼が、持っていたシャンパングラスを軽く持ち上げ、早穂子に微笑みかける。
鶴田とゆずが結婚を決める数か月前、鳥飼は関西へと転勤になったのだが、ちょくちょく仕事で戻ってくるので、そのたびに四人で食事をしたり、遊んだりはしている。
そして早穂子と鳥飼は、わりといい友人関係を保っていて、他人からは付き合っているのかと尋ねられることもあるが、まったくもってそんなこともない。
ゆずは「鳥飼さんにしておけばよかったのに」と少し残念そうだったが、結局、二年以上たっても、早穂子は始のことを思い出にできないままだったのだ。
始を失った穴埋めに、誰かと付き合うつもりはないし、むしろ彼を失った寂しさもまた、始と作った思い出のひとつだと、今ではすっかり開き直っている。