御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(さて……)
気を取り直し、ぐるっとガーデンを見回す。
美しいグリーンが生い茂る庭には上座も下座もなく、大きな円卓がいくつも並べられていて、それぞれに食事を楽しんだり、おしゃべりに花を咲かせている。
とりあえず新しい飲み物をもらってテーブルに戻ろうかと思ったところで、
「君、蓮杖さんだよね」
と、背後から声を掛けられた。
「はい?」
振り返ると、そこにはかなり背の高い美男子が立っていた。
見上げるほど背が高く、上等なドレススーツを身にまとっている。
まるで絵画から抜け出してきたような、涼やかで凛々しい、雰囲気のある男性だ。
自分にこんな美男子の知り合いがいただろうかと少し悩んだ後、ハッとした。
「もしかして、槙さんですか!?」
「そうだよ。久しぶり」
青年はにっこりと微笑む。
そう、なんと早穂子に声をかけてきたのは槙白臣だった。
「えっ、どっ、どうしてここに?」
「俺も招待客だからね」
激しく動揺してしまった早穂子に、白臣がさわやかに答える。
「あ……そっか……そうですよね……」
鶴田はカノーロの社員で、白臣はカノーロの御曹司、専務だ。
彼がここにいておかしなことはまったくない。
一瞬、『バッカスの会』でのことを思い出して、胸がざわついてしまった。
(始さんと……一緒にいるのかと思った)