御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そんなはずがあるわけないのに、いまだにあちこちに始の影を追い求めてしまう自分が、我ながらちょっと重苦しい。
(でも……まぁ、いいわ。私は重いタイプの人間なんだから。他人に迷惑さえかけなければ、心の中で何を思っていても自由よ……たぶん……)
ここで彼に会ったのもなにかの縁だろう。
心の中で言い訳をしながら、早穂子は白臣に思い切って尋ねた。
「あの、始さんはお元気ですか?」
早穂子が会社で耳にするのは、あくまでも彼の仕事上のことで、プライベートなことは一切知らない。
いや、職場の誰もが知りたがっている雰囲気はあるが、そういった情報がまったく入ってこないのだ。
(でも、本当に仲のいい槙さんなら……なにか知ってるかも)
早穂子は期待に満ちた目で、白臣を見上げる。
だが彼の返事は意外なもので――。
「たぶん元気なんじゃないかな」
「たぶん?」
あいまいな返事に、意味が分からず軽く首をかしげると、白臣は早穂子の反応をどこか楽しげに見つめ、やんわりと目を細めた。