御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

だが今度は早穂子の両方の肩に、始の手が乗る。


「――不思議だな」


始が顔を近づけて、目を細める。


「え?」


その声のトーンは低く……少しいつもと違っているような気がして、佐和子の胸は甘く痛んだ。


「離れがたい気がする」
「あの……」


離れがたいというのはどういう意味だろう。


「――失礼」
「ひゃっ!?」


一度離れた腕が、もう一度早穂子の背中に回った。

ぎゅうっと抱きしめられて、息が止まりそうになる。


(ななななな、なんでっ!)


目が点になる早穂子だが、始は躊躇なく、早穂子の背中を手のひらで撫でる。

まるで形を確かめるようなその仕草に、早穂子の全身は火をつけられたかのように熱くなった。

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