御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「あっ、あのっ……?」
「ねぇ……」
耳元で始が低い声でささやく。
「いったん俺が会社の人間だってことを忘れて聞いてくれる?」
「は……はい……」
会社の人間もなにも、山邑始は自分の中で憧れで、雲の上の人過ぎるのだが。
いったい何を言われるのだろうと、早穂子は緊張して始の言葉を待った。
「今日はこのまま、俺の腕の中で眠ってみない?」
「え……?」
始の唇が、早穂子の耳たぶにふれる。
「俺も、きみと寝てみたい」
そう、色気たっぷりにささやかれて――。
呆然としていると、始の歯が、早穂子の耳たぶをかんだ。
「いやならここで俺から逃げて」
耳朶にふれる甘い誘惑は、そのまままっすぐに早穂子の心を射抜く。
「逃げないなら、このまま君をさらっていく」
早穂子はその一瞬で、世間体や常識をすべて、忘れてしまった。
どうしようもなく恋に落ちていた。