御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
流されたわけではない。
有無を言わさずさらわれたいと思ったし、自分の意志で――憧れの人に抱きしめられたいと思い、彼を抱きしめたいと思ったのだ。
彼に手を引かれて、ホテルの高層階の部屋へと向かった。
「緊張してる?」
ドアを閉めるとすぐに始が顔を近づけてきて、ささやいてきた。
「少し……」
心を決めたとしても、当然百パーセント心を開いたわけではない。
憧れの人とふたりきりで、緊張してしまう。
「緊張しないでいいんだよ。楽しむんだ」
頬を撫でられ、それから額に唇が押し付けられる。
チュッと音がして、それからこめかみ、頬、首筋とキスが移動する。
おそらくわざとだと思うのだが、妙にくすぐったくて、早穂子も「ふふっ」と笑ってしまう。
おかげで少し、体の力が抜けた。
そのまま押し倒されるようにベッドにもつれ込んだが、次の瞬間、早穂子はハッとした。