御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
急いでシャワーを浴びて、バスローブを着て出ると、スーツの上着だけ脱いだ始がベッドに寝ころんでスマホをいじっていた。
なんだか背中に【拗ねてます】と書いてあるように見える。
「す、すみません……おまたせしました」
おそるおそる彼の背後から正面に回り、声をかけると、案の定、始は背中を向けたまま、
「待ちくたびれちゃった」
と唇を尖らせていた。
「めちゃくちゃ興奮してたのに、三十分もお預けされてさ~……」
「十分もかからなかったと思うんですけど……」
「いや、俺は三倍くらいの長さに感じたね」
始は上半身を起こして、早穂子を見上げる。
「俺を焦らしたらお返しが怖いよ?」
その拗ねた顔が妙にかわいく見えて、早穂子はフフッと笑ってしまった。
そして笑った早穂子を見て、始もにっこりと笑う。
ふたりの間の空気が、柔らかく変化していく。
「おいで」
差し出された手に自分の手を乗せると、つかまれてグッと引き寄せられた。
ベッドの上に押し倒され、始がのしかかってくる。
「リラックスして……」
大きな手のひらが頬を撫でた。
「今この瞬間を、楽しめばいい」
彼の澄んだ紅茶色の瞳に、自分の影が映る。
目を閉じると同時に、唇がふさがれた。
――――・・・