御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
早穂子は始のまっすぐな視線を避けながら、仕方なく問いかけた。
「あの……もしよかったら、召し上がりますか?」
「うん」
始がパーッと笑顔になった。
逃げて帰ってきたというのに、なぜか我が家で一緒に朝ご飯を食べるという、おかしなことになってしまった。
「波佐見焼だね。好きなの?」
始が食卓の上の食器を見て、目を細める。
「はい」
早穂子は食器を買うのが好きなので、ちょっといいものを少しずつ集めているのだ。
波佐見焼はデザインがモダンなものが多く、最近特にお気に入りだった。
「長崎に行ったことはある?」
「いえ、これはデパートの催事で買ったので行ったことはないです。いつか行ってみたいとは思うんですけど」
始の上着をハンガーにかけて、それから食器に始の分の朝食を盛り付ける。
「いただきます」
「どうぞ……お口に合えばいいんですが」
早穂子はアハハ、と笑いながら、とりあえずお味噌汁に口をつけた。
(いったいなにしに来たんだろう……忘れ物を届けに来たって感じでもないし、いや、そもそもなんでうちがわかったの?)