御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「あ、起きないで……」
早穂子は慌ててお願いする。
自分は総務部の一社員であり、始は副社長で雲の上の人だ。
だからこれが夢だとわかっていても、目が覚めた始とまともに会話できる気がしない。
「んー……どうしようかな」
「えっ?」
始は目を閉じたまま、微笑む。
「起きないでなんて、初めて言われたんだけど……」
「えっ、あの、そ……そこをなんとか……」
ある意味これは起きているも同然のような気がしたが、まだ目を閉じている。
(だからセーフ!)
「じゃあ……」
始がなにかを言いかける。
「じゃあ?」
「――キスしてくれたら、起きない」
「キスしたら、起きない……」
なにを言われたかよくわからなくて、真面目に聞き返してしまった。
「ふふっ……面白いなぁ……普通逆だよね……普通は……キスしたら起きるって言うよね……」
山邑始は、クックッ……と肩を震わせながら笑うと、そのまま目を閉じたまま、早穂子の頭の後ろに手を回し、引き寄せた。
「ほら、キスしよう。じゃないと俺、目を覚ましてしまうかもしれないよ……」
ゆっくりと斜めに傾けた始の顔が顔が近づいてくる。
(う、うそ……ゆ、夢なのに、キ、キ、キッ……キスッ……!)