御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
なにを言っているのかと顔を見上げると、始がきょとんとした顔で見つめ返してきた。
「お茶碗。俺も新しいのが欲しい」
そして始は早穂子がカゴにいれたものと色違いのお茶碗を手に取って、カゴに入れると、カゴをひょいと持ち上げた。
「あ」
そしてそのままスタスタと奥のレジカウンターへと向かう始を、早穂子は慌てて追いかける。
財布からクレジットカードを出す始に早穂子はまたさらに動揺してしまった。
(クレジットカードが黒い……! 初めて見た……! じゃなくて、ダメダメ!)
「ここは私に払わせてくださいっ!」
そして何色でもない普通のカードをカウンターに置いた。
「え、でも」
始が目を丸くする。
(わかる、わかります、山邑始の辞書には女性に財布を開かせるって単語がのってなさそうってことぐらい!)
けれど早穂子は、たとえ始が自分の給料の十倍を稼いでいたとしても、全て甘えて当然のことのように受け取ることに、抵抗がある。