御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「どうしたしますか?」
カウンターの中の店員が早穂子と始を見比べた。
「これでお願いします」
早穂子はカードをグイッと押し出して、それから始を見上げる。
「あの……ここまで連れてきていただいたので、せめてちょっとしたお礼ということにさせてください……お願いします」
(ただの自己満足かもしれないけど……)
すると始は、ふっと目を細めて微笑んだ。
「わかった。ありがとう」
「いえ……」
素直に受け取る気になってもらえてよかった。
早穂子はホッと胸を撫でおろす。
割れ物を抱えて持って帰るのも不安なので、配送してもらうことにした。
カウンターの端で、伝票に自分の家の住所を書いていると、早穂子の肩にぶつかるようにして始が顔を近づけてきた。
「きれいな字だね」
「えっ……ありがとうございます」