御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

このお茶碗を、始は早穂子の手料理を食べるのに使うと言っている。

ということはすなわち、始はまた早穂子の部屋に来るということを意味するわけで……。


(そんなこと言っていいの……? あとで困ったことにならないんですか?)


もし自分がもっとピュアな女の子だったら、始の言うことをすべて真に受けて、天にも昇る気持ちになるだろう。

そういう意味で、始は罪な男だと思うが……。

相手が自分だから、かえって本気にとられないと了承してこんなことを言うのだとしたら、始の罪はもっと重い。


(困った人だな……でも、らしいと言えばらしいけど……)


早穂子は苦笑して、はにかむようにうなずいた。







それから始と、当初の予定通り嬉野温泉のかなり立派な旅館に宿泊することになった。

老舗旅館らしいことは遠くから見てもすぐにわかった。本館と新館、そして離れが大きな敷地の中にゆったりと立っている。

出迎えは美しい大女将で、当然、始と顔見知りのようだ。

だがさすが老舗旅館というべきか、過度な干渉はしないらしい。

早穂子も軽く会釈して、部屋へと案内してもらった。


< 48 / 276 >

この作品をシェア

pagetop