御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「どうぞこちらへ」
女将直々に案内された、離れにある特別室は、喧騒とは無縁の静かな部屋だった。
ふたま続きで、縁側があり、目の前には専用の広い庭がある。
(いったい一泊いくらするんだろう……)
「この部屋直前にキャンセルが出たんだって。空いててよかった」
庭をぼーっと眺めている早穂子の背後から始が近づいてきて、そのまま抱きしめる。
「あ」
「うん?」
「あの、着替えとか……新しい服とか、ありがとうございました……」
いったいどういう手順なのかはわからないが、この部屋に入ったら、部屋の真ん中のテーブルの横に、いくつかショップの紙袋が置いてあった。
早穂子が普段買えないような高級品だかりだ。
「いや、いきなり連れ出したしね。着替えはいるでしょ」
始はフフッと笑って、それから早穂子の耳元にささやいた。
「内湯に露天風呂がついてるんだよ」
「露天風呂……」
「嬉野のお湯は美肌の湯っていうしね。一緒に入ろうね」
「……えっ!?」