御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そして凍り付いたように体を硬直させる早穂子の唇に、そっと、柔らかく始の唇が重なった。
夢でも駄目だと思ったのに、つい誘惑に負けてしまった。
(や……やっぱり柔らかい……)
山邑始の唇はとても柔らかかった。
ふわふわしていて、あたたかくて、三十を過ぎた男性の唇がこんなに柔らかいと思わなかった。
いや、これは山邑始だからだろうか……。
二十七歳の早穂子にも、一応男性経験はあるのだが、かなり少ないという自覚はあるので(要するに一人)比べることもできなかった。
「んー……」
そして唇をくっつけたまま、山邑始は考え込むように声を上げると。
唐突に唇を外し、パチッと目を開けたのだ。
「やっぱりこれ、正解なんじゃない?」
始の澄んだきれいな目を至近距離で見て、早穂子の心臓は跳ねる。
(さすが夢……まったく流れがつかめない……!)
「なにがですか?」
なかなか冷めない夢に若干不安な気持ちになるが、つい問いかけてしまった。