御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そして始は腰にバスタオルを巻きつけると、ドアを開け、中に入ってきた。
まだ夜というにはずいぶんと早い、夕方の日差しの中で、始は惜しげもなく体を晒している。
一瞬ぽーっと見とれかけたが、それどころではない。
「ちょっ、だだだ、だめですって!」
早穂子は焦りつつも、ザバザバとお湯をかき分け入り口から遠ざかろうとするが、それほど広くない露天風呂の中で逃げ場などあるはずもなく。
結局、あっさりと始に手首を捕まえられ、そのまま温泉の中に体を沈めることになった。
「はーい、つかまえた」
「もうっ……!」
恥ずかしいやらなんやらで、早穂子はお湯の中で膝を引き寄せる。
「なんていうか……きみは本当に素直だよね」
膝で胸を隠し、子供のように背中を丸めて温泉に浸かる早穂子の隣で、始はクスクスと笑って楽しそうだった。
確かに彼の言うとおり、始が入ってこないと信じ切っていたから、身を隠すタオル一枚、手元に持ってきていないのだ。