御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

始にしてみれば、自分など赤子の手をひねるよりも簡単に違いない。


「……バカにしてますよね?」
「してないよ。好きだよ、そういうところ……可愛いって思う」


始は目を細めてにっこりと笑った。

その笑顔は本当にきれいで、まぶしくて……。


ああ、この人は本当に卑屈なところなどいっさいない、愛されて育った人なんだとわかったような気がした。


(全然勝てる気がしない……)


それから始は、髪を濡れないようにアップにした早穂子の首筋を指の背で撫でた。


「首、きれいだね。ここの骨が出るの、すごく色っぽくて、そそられる……」


始の指が、早穂子の首の後ろをなぞっていく。


(きれいとか、可愛いとか、好きとか……簡単に言っちゃうんだな、この人は)


早穂子はハァとため息をつきつつも、隣の始を見上げた。
< 53 / 276 >

この作品をシェア

pagetop