御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
御曹司の憂鬱
山邑始は不感症だった。
とにかく性的な刺激に対して、何の感情も沸かない。
心と体、どちらがエラーを起こしているのかはわからないが、とりあえず十代のころから、ずっと自分は不感症だなと思って生きてきた。
始の場合、完全にダメというわけではなく、あくまでも気持ちの問題で。
だから異性とそういう関係になることもあるが、不感症なのではないかと自覚してからは、一度もセックスを楽しいと思ったことがない。
ただ女性に恥をかかせないよう最低限男らしく振舞うことだけを気にかけて、気が付けば三十を超えていた。
(でも、久しぶりに気持ちよかったんだよな……)
なりゆきといえばなりゆきだった。
本当は社員に手をつけるなど言語道断、絶対にそんなことはしないと心に決めていたというのに、懇親会の夜、蓮杖早穂子に触れて、どうしても欲しくなったのだ。
(確かに見た目は俺の直球、すっごいタイプだったけど……)
目が覚めて早穂子の姿が消えていた時は驚いたが、すぐに彼女の自宅を調べて強引にデートに連れ出してしまった。