御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

彼女は物静かで、しっとりした落ち着いた雰囲気の美人だ。

でもちょっと天然っぽいところがあって、中味が少女のようで、見た目とちぐはぐなリアクションをするのが面白かった。

まだ完全に始に心を許している雰囲気ではないが、出来れば少しずつ、彼女との仲を進めたいと、始は本気で思っていたのだった。






「――山邑さん……始さん……ちょっと聞いてらっしゃいますか?」
「ん、聞いてるよ」


始は目の前に広がる山邑リゾート本社、副社長室の窓の外の景色を眺めたあと、隣に立つ男の顔を見つめ返した。


早穂子との小旅行からすでに一週間ほど経っていた。

基本的に始は連日出張や打ち合わせでほとんど社内にいない。

久しぶりに本社に帰ってきたので、早穂子に連絡しようと思っていたのだが、帰社するよりも前に、この男から連絡があり、残業の運びとなった。


「湊(みなと)、お前髪切ったんだな。似合ってるぞ」


ぐっと親指を立てると、湊が呆れたように眉を寄せる。


「全然聞いてないじゃないですか……それに、だれかれ構わずほめたたえたり、口説いたりするのやめたほうがいいですよ。真実味がないんで」


彼の名は神尾湊(かみおみなと)といい、始の学生時代の後輩である。


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