御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
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「日本茶でいいですか?」
「うん、ありがとう」
玄関から入ってすぐのダイニングキッチンに始を招き入れ、早穂子はやかんを火にかけると、長い髪をシュシュでひとつにまとめた。
ダイニングテーブルに座って、始は周囲をキョロキョロと見回す。
キッチン周りの調味料は早穂子の趣味らしい陶器に移し替えられ、きれいに並べられた食器、ピカピカに拭かれたテーブルは清潔だ。
始のひとり暮らしのマンションのように無機質ではなく、人が住んで生活をしているという気配が部屋を満たしている。
初めてこの部屋を訪れて朝食を食べさせてもらったときは、周囲に目を配ることも出来なかったが、こうやって彼女の生活ぶりを見ていると、堅実な性格が伝わってくるようだった。
「ねぇ、いつからひとり暮らしなの?」
「大学に入ってからずっとです。同じマンションの下のほうの階に住んでいて、社会人になってから上の階に引っ越しました」
「ふぅん、そうなんだ……」
お米をとぐ早穂子を後ろから見つめつつ、始は頬杖をつく。
やかんのお湯が沸いて、ピーッと音が鳴った。
早穂子は用意していたガラスの急須にパパッと茶葉を入れ、茶碗にお湯を注いでそれを今度は急須に写すと、始の前に急須と茶碗を置いた。