御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
すると早穂子は、始の顔をじっと静かに見つめたあと、指にかじりついて歯を立てた。
その目はまっすぐで、ドキッとするほど強く。
彼女の芯の部分を垣間見たような気がして、始をひどく興奮させた。
濃密な時間を過ごした後、早穂子は始の腕の中で、頬を胸に押し付けたままささやいた。
「副社長の口癖……」
「ん?」
「楽しめばいいって、言いますよね」
早穂子に言われて、始は「ああ……」とうなずいた。
「そうだね。人生の信条だ」
「――」
早穂子が考えるように目を伏せる。
「それがどうかした?」
「あ、いえ……そんな風に考えたことなんか一度もなかったから」
それから早穂子はふっと笑って、裸の上半身を起こすと、始を見下ろして髪に触れる。
「私も、楽しめばいいんですよね」
「――そうだよ」
始はうなずいて、早穂子の細い手首をつかんで抱き寄せた。