御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
溺れるほど甘い
「サホちゃん、おなかすいたー」
後ろから抱きしめられたまま、いきなり名前を呼ばれたときは、驚いてベッドから落っこちそうになった。
それまで早穂子は、わりとシリアスな気分でいたのだ。
【俺のことを好きでもなんでもないと思うけど、別に構わない】
【恋愛は成就するまでが楽しい】
【恋をしているときみたいに、楽しんでくれたらいい】
始は早穂子に本気になるなと暗にほのめかしている。
早穂子の気持ちを先回りして、抑え込むような始の言葉に、早穂子はひそかに傷ついていた。
だが始の立場を思えば、それも当然だろう。
だったら立場をわきまえて、始の望むようにするしか、彼のそばにいられる方法はないのだとーー
真剣に思っていたところだったのに。
「ちょっ……今、このタイミングで名前を呼びます!? しかもサホちゃんって……」
早穂子はかなり驚いて、いったいどんな顔をして名前を口にしたのかと、始を肩越しに振り返る。
すると始は少し自慢げにふふふと笑って、目を細めていた。