御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

「あんまり俺をいじめないでよ」


始はクスクスと笑いながら、両腕でグイッと早穂子の上半身を起こして、後から抱きしめてきた。


「ね、サホちゃん」
「もう……」


早穂子はため息をつきながらも、笑うしかない。


(この人には本当に勝てる気がしない……)


いや、考えてみれば、最初から勝とうなんて一度も思っていなかった。

ただ貴重な宝石のようなこの人に触れてみたくて、その輝きを近くで見つめたい……。

そんな憧れが募った結果だった。


(だったらもう、仕方ない……)


背中にぴったりとくっついた始のぬくもりや、頬に触れる吐息に胸が詰まりながら、精いっぱいの笑顔を浮かべて振り返る。


「じゃあ、始さん、ごはんにしましょうか」
「おお……“始さん”だって……」


< 73 / 276 >

この作品をシェア

pagetop