御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
早炊きモードにした意味はなかったなぁ、と思いつつ、炊飯器をあけ、キノコごはんをしゃもじでほぐしていると、始がタオルで髪を乾かしながら、姿を現した。
「サホちゃん、着替え用意してくれてありがとう。おかげで脱いだパンツを履かずに済んだよ」
「それはよかったですね……」
始の口から脱いだパンツと言われると、コミカルな雰囲気になる。
こういう会話が、さすが空気を読む能力が高いと思わざるを得ないのだ。
ちょっとだけ肩の力を抜いて、お味噌汁を温めながら、始を振り返る。
「ていうか俺、よくここのメーカーのシャツ着てるんだよ」
始が指先で、Tシャツをつまむ。
「そうだったんですか」
(いえ、実は知ってます……)
過去、始のインタビュー記事を見て、そのことをたまたま覚えていたのだ。
だが今ここでそれを口にすると、ストーカーのように思われるような気がして、早穂子は知らなかったていでうなずいた。