御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そして切れ長の目を細め、低い声でささやいた。
その目は本当に――真剣に見えて。
早穂子の胸はきつく締め付けられるような気がした。
だが始のいうことをそのまま受け取ってはいけない。
彼は山邑始だ。
なにげない会話ですら、優しさを忍ばせる。
「違いますよ」
「ほんとに?」
「本当です……」
早穂子はうなずいて、そして観念したように口を開く。
「っていうか、明らかに今シーズンの、出たばかりの新作だってわかってますよね?」
始が普段よく着るブランドなのだから、目にしたことがないはずがない。
だから始はわかっていて、わざわざ聞いているのだ。
「――ふふ」
始が楽しげに笑う。
「ほら、やっぱり……」
(嫉妬してるフリなんだ……)