御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~


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うとうとと眠る早穂子の耳に歌声が聞こえた。始の声だ。
早穂子と同じベッドの中ではない。部屋の中をいったりきたりしながら甘い声でどこかの国の優しい歌を口ずさんでいる。

(そういえば前も、聴いたっけ……)

早穂子は目を閉じたまま、彼の歌声に耳を傾ける――。



早穂子は始とこうなる前から、始のことをひとりの男性として意識していた。

あれは入社して早々の頃。レストルームで起こったことだった。

始業前に、昨晩一睡もできなかった早穂子は、場所を変えれば眠れるのではないかと、やってきたのである。

(うーん……やっぱりそう簡単には眠れないかな……)

早穂子は目を閉じたままそんなことを考えていたのだが、ガチャリとドアが開く音がして、一瞬体がこわばった。心臓がどきりと跳ねる。

(嘘、誰か来た……?)

もちろん山邑リゾートの社員は誰だってここを自由に使っていいのだが、主に使われるのはお昼休みで、朝は誰もいないのがセオリーだ。まさか自分以外に朝から睡眠をとろうとやってくる人間がいるとは思わなかった。

たくさんのベッドが並べられていて、当然身長よりも高い仕切りがあるので覗き込まれることはないはずだが、少し緊張してしまう。

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