私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~
「おい、あれはいいのか」
とバルコニーで長く話している茅野と玲を指差し、秀行が言ってきた。
穂積は、いいわけないだろ、と思いながら、ワインを一口、口にする。
微笑みを浮かべ、茅野と話している玲は、我が弟ながら、惚れ惚れするような男っぷりだ。
っていうか、なんで、こんなことに……。
茅野と二人で出かけるはずだったのに、と未練がましく思っている横で、秀行が、
「おい、奈良坂。
いつまで選んでるんだ。
早く頼め」
とワインリストを見たままの奈良坂を急かす。
なんだかんだで、奈良坂に好きに選ばせているところなどは、やさしいと言えなくもない。
まあ、選ばせておいて、ケチもつけているが……と思っていると、秀行は、
「そういえば、茅野はまだ、あの怪しい店に行っているようだが。
今日もなにか買ってたぞ。
お前に使うつもりなのかな」
と暇なことを言ってくる。
しかし、確かに、迂闊に迫ったら、あっと驚く飛び道具を出してきて、反撃してきそうな雰囲気はある。
一応、両思いのはずなのに……。