私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~
 




「おい、古島弟」
 隣の席になった秀行に、玲は訊かれた。

「なんの話してたんだ? さっき」

「いや……ちょっとね」

「いい雰囲気だったじゃないか」

「おにいちゃんの話だよ。
 いい雰囲気になりようがないよ」
と苦笑し、玲はデザートのレモンシャーベットを食べた。

 器もよく冷えていて、美味しい。

 レモンの欠片の黄色がシャーベットと器の白によく映えている。

「前よりかえって距離を置かれてる気がするってさ」

 ふーん……と秀行は言ったあとで、
「おい」
と奈良坂がまだ見ていたワインリストをつかむ。

「何本頼む気だ、貴様っ」
と文句を言っていた。

 その前では、
「ああっ。
 そこ押したら、発射しますっ、穂積さんっ」
と茅野たちが騒いでいる。

 ……なにやってんだろうね、この二人は、と思いながら、玲は眺めていた。






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