私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~
 秀行は話す声は笑っていたが、瞳は冷静に正面に見えてきた駅の方を見ていた。

 ……茅野が家に帰らなくてもって。

 どういう意味?

 私、今夜、殺されるっ? と今までの流れで思ってしまったのだが、秀行は、
「やだな。
 僕じゃないですよ。

 古島ですよ。
 かわります」

 いきなり、ほれ、と穂積に携帯を渡した。

 は? とついていけずに穂積は固まっていたが、秀行はさっさと行ってしまっていた。

 ええっ? という顔をしながらも、穂積は丸投げされた会話を続けるべく、茅野の母と話し始める。

「はっ……?
 はい。

 ああ、そうですね」

 たぶん、今、秀行が言ったことで、今夜帰らないとはどういう意味なのかと問われているのだろう、と思い、心配する。

 実際、穂積の顔色は悪かった。

 いきなり、親に向かって、今夜、茅野を帰さないと宣言してしまったことになってしまったからだ。
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