私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~
 



 今日、プロポーズされました。

 今度のプロポーズは嬉しいはずだったのに。

 なんだろう……。

 愛が深まったというより、秀行さんの株が上がって、二人の友情が深まって――。

 秀行さんのうちの親からの信頼度も上がって。

 きっと正月にもうちに居ます……。

 ぼんやりそんなことを考えながら、機械的に歩いていたのだが、いつの間にか、手が温かくなっていた。

 下を見ると、自分の手が穂積の手に包まれていた。

 穂積を見上げたが、彼は目も合わさず、前を見て、一心不乱に歩いている。

 いつも通りの穂積に、なんだか笑ってしまった。

 やっぱり、秀行さんがなにか言ってくれなかったら、この人はなかなか言い出せなかったかもしれないな、と思う。

 やさしい人だし、秀行さんにも遠慮して。

 感謝……

 すべきなのでしょうかね?
と秀行たちを目で探したが、いつの間にか居なくなっていた。
< 26 / 29 >

この作品をシェア

pagetop