私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~
 


 
 茅野が穂積への愛を再確認していた頃。

 茅野に微笑み返しながら、内心、穂積は固まっていた。

 こ、このまま連れて帰っていいのだろうか。

 逃げられたり、ネットランチャーで撃たれたりしないだろうか。

 ――と思っていた。

 だが、茅野は自分を見つめ、強くその手を握ってくる。

『あの、何処のどなたか存じませんが。
 私と結婚していただけないでしょうか?』

 初めて会ってプロポーズしてきた、あのときと同じ瞳だ、と思った。

 茅野は今まで会った誰よりも真っ直ぐに自分を見つめてくる。

 ……だが、何度思い返しても、何処のどなたか存じませんがっておかしいと思うぞ。

 声かけたのが俺でよかった、と心底、思いながら、その手を握り直す。

 なんだか秀行にのせられたような気もしているが。

 やっぱり彼女を離したくないと思った。
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