私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~
 



「お前、バスか」
 店の外で、秀行に訊かれた。

 はい、と言うと、バス停まで送ろうと言う。

 歩く道道、秀行は言ってくる。

「ちゃんと食ってるか」
「はい。
 実家なので」

「部屋は散らかしてないか」
「秀行さん、立場が逆です……」

 それは私が訊くところです、と思っていたが、まあ、この人のことだから、ちゃんとやってるんだろうな、と思っていた。

 むしろ、私が居た頃より、綺麗にしてるかも、と思う。

 そのとき、目の前をアメリカンショートヘアのような猫が、すたたたたっと駆け抜けた。

 店と店との隙間の細い路地に入る。

 あ、猫、と目で追っていると、秀行も見ていた。

 その路地の横を通ったので、覗くと、もう何処かへ行ったのだろうと思っていた猫がそこにとどまり、こちらを見ていた。

 猫と目が合う。

 暗いところで、まんまるに大きくなった目が可愛らしく、思わず、笑うと、秀行も笑った。

 猫見てんのかな、と振り向くと、秀行は自分を見ていた。

 思わず、赤くなって俯く。
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