秘密の陰陽師 【肆】上
皆の事を考えていると涙が堪えきれなくなった。
ポタッポタッと涙が落ちる。
何度拭いても涙は溢れてくるばかりで。
いつもの通学路には舜と拓海がいた。
その道を一人で歩くのがこんなにも心細いなんて思ってもいなかった。
それでも時間は進むもの。
気づけばもう学校の前だった。
時計を見ると午前6時ぴったりを指している。
涙を拭き、ゆっくりと中庭へと足を進める。
一歩踏み出すのがとても重く感じる。
中庭に着くと大きな木の下にスーツを着た人が立っている。
向こうを向いていて顔が見えない。
先生かな?
私はその人にゆっくりと近づいた。
その人との距離が3メートルほどになった時
その人はこちらを振り返り
「待ってたよ。一ノ瀬」
そう言って微笑んだ。
「先生…」
「一ノ瀬なら必ずきてくれると思っていたよ。皆とのお別れは済んだか?」
「はい…」
嘘。本当は一番大切な人達にお別れを言っていない。