秘密の陰陽師 【肆】上




「時間がないからタイムワープでアメリカに行く。それでもいいか?」




「はい…」




タイムワープとは陰陽師の一種の能力で、ある地点からある地点まで瞬間的に移動できる技。




でもその技はね、洗練された技を持つ陰陽師にのみ許される技なの。



並大抵の陰陽師はそれを許されていない。



日本でタイムワープを許されているのは陰陽長だけ。私はおろか、おじいちゃんだってタイムワープを許されていないの。




その技を先生が使えるっていうとは…つまり私たちなんかよりずっとずっと技術も知識もあるってこと。




「研究所の皆も一ノ瀬が来るのを心待ちにしているよ。向こうで不自由はさせない。安心してくれ。
さぁ、俺に身を委ねて」




そう言って先生が手を差し伸べてくれる




この手を取ってしまうと…本当にアメリカに行っちゃうんだね





5年…皆と会えないんだよね…




手が震えだす




「どうした?」




先生が顔を覗き込んで来る




「…いえ」




今更戻ることなんてできない。



私を応援してくれる家族だっている。



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