側婚
でも……。

『結婚しましょう』

『…えっ?』

不安だ……。

『次に来た時に聞け!!!』

『私、待ってるからね!!!』

長倉さん夫妻のためにも…。

『また来たのか』

『自動販売機を設置してくれたからって、気をつかって、来たりしなくていいのよ?』

『何も気をつかってませんよ。
私は来たいから来てるんです。食事がとてもおいしいので』

福永さんのためにも…。

私が誤解を解いて、今まで通りうちの食堂に通ってもらわないと!!

福永さんが結婚を考えている人がキレイなのか知らないと!!

よし!!!

福永さんがスーツの上着の内ポケットに黒の財布を入れる。

「あの! 結婚」

「良いですよ。
結婚」

「…良い?」

「はい。
さっきの返事です」

「ああ…。さっきの返事…」

「はい」

つまり……私と結婚するって事?

「でも、福永さんは結婚を考えている人が居るんじゃ…」

奥さんに言ってましたよね?

あれは…嘘?

「考えてましたよ。考えて…。
それで今、答えを出しました」

「なるほど……」

結婚を考えている人って私の事だったんだ!!

「どうしますか?」

「そうですね…」

福永さんに聞きたい事もあるし、私も福永さんに話したい事があるから…。

「では…」

私は福永さんの後ろに立っている人に気づいた。

あの大柄の作業服の男性だ!!

私をにらんでる!!!

「後で、連絡しますので。
仕事に行って下さい!!!」
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