側婚

「私、嘘が下手みたいで…。
すぐバレて怒られたんです」

「そうでしょうね。フッ…」

福永さんは前触れもなく吹き出すと、笑う。

何がおかしいの？

「…すいません…。
想像してしまって……ハハ…」

想像？

私が怒られてる所を想像して笑ってるって事？

なんか！　ムカ…つかないな……。

「ハハハ…ハハ……」

…どうしてだろう？　笑われてるのに…。

この人の笑顔を見ると、怒りなんかどっかに行ってしまう……。

いや……怒りがなくなったのは、笑顔のせいじゃなくて……。

「…落ち着きましたか？」

「はい……。
すいません……。
怒って…ますよね？」

「いえ」

怒ってないですよ。

「怒ってないん…ですか？」

「はい。
正確に言うと、怒りはわきそうだったんですけど、なくなってしまったんです。最初は福永さんの笑顔のせいなのかなって、思ったんですけど……」

「違っ…たんですか？」

「はい。
多分ですけど、きっと違います」

「じゃあ…何でですか？」

「私…。
福永さんと一緒に居ると、落ち着けるんです。
それに福永さんって安心感がある人なので」

「だから…怒りがなくなった……」

「はい。だから……。

福永さんと結婚したいと思いました」