紡ぎ会い、紡ぎ合う。
紡ぎ会い、紡ぎ合う。
 小説家になりたい。

 輝く瞳で語る彼の夢を、私は応援していた。

 付き合ってた頃、何度か彼の書いた物語を読ませてもらった。ほとんどの物は面白かった。小説のことなんて分からないけど、この人は才能がある人なのかもしれないと素直に思った。彼を好きだったから、多少のひいき目があったかもしれないけれど。


 私達は同じ高校で知り合った。たまたま隣同士の席という、ありがちな出会い。

 国語のテストは常に満点。かと思えば数学だけ赤点ギリギリという極端な成績を担任に嘆かれていた彼に、とてつもなく興味を惹かれた。

「数学で赤点じゃない人ってすごいよね。尊敬する」

 私の答案用紙をチラリと見て、彼は言った。初めてまともに話したのはその時。

「ううん、尊敬される点じゃないよ」

 頬が熱くなるのを感じつつ、55点の答案用紙を隠す。

 その後何度か言葉の応酬をした。緊張か戸惑いか、何を話したかよく覚えていない。楽しかったって印象だけは強く残っている。


 それから私達は何気ない会話や日常の挨拶を繰り返した。音楽の趣味が合って何度かオススメの曲を教え合ううちに付き合うことになった。

 彼が好き。中学の時も仲良く話せる男子はいたけど、どれだけ話しても飽きないのは彼が初めてだった。初恋だった。

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