紡ぎ会い、紡ぎ合う。
私は彼と同じ大学に進んだ。彼の目指した文学部にひっついていく形の進学。親には「本当に他にやりたいことはないの?」と疑問視されたけど無視した。彼といられる時間が長く取れればそれでよかった。
しかし、二十歳になる頃、恋とか愛とか甘いことばかりは言っていられなくなった。
某大手出版社の新人賞を取ったことで、彼の生活環境がガラリと変わったからだ。その道では有名な新人賞だったことから連載小説の話を各社から持ちかけられ、彼は多忙の身となった。
彼の夢が叶うことを応援していたはずなのに、いざそうなると素直に喜べなかった。彼が遠くへいってしまう予感しかなくて。実際その通りになった。
講義の傍ら投稿作品を書いたり私と会ったりして時間を工面していた彼の暮らしは、受賞してから小説を書くこと最優先の生活に切り替わった。
芸能人と付き合っているのだと錯覚してしまうほど、彼と会えない日々が続いた。