紡ぎ会い、紡ぎ合う。
彼の新刊は、私との恋愛を軸にしたフィクション恋愛小説らしかった。
立ち読みだけでは物足りない。5ページ分ほど読むと、そのまま本を手にレジに向かった。
書店を出る時、同じ本を立ち読みしている女子高生の姿が目に入った。
久しぶりに本を買った。心地いい重みがカバンの中で揺れた。
翌日も仕事なのに、シャワーや夕食も忘れ徹夜で読破してしまった。
付き合っていた頃より文章が上手になり表現の幅も広がっていた。技術的なことは漠然としか分からなかったけど、やっぱり彼の小説は面白い。
……と、批評みたいなことを心でやってしまうのは、彼のまっすぐな想いに少なからず動揺しているからだ。物語に込められた彼の本音を消化するための時間がもう少しほしい。
思うように会えなかったあの頃、彼がどれだけ私を想ってくれていたか。私と別れた後、彼がどれだけ悲しんでいたのか。
《会えなくても想いはつながっている、だなんて、僕の慢心だった。会えなくて寂しいのは彼女も同じなのだと早く気付くべきだった。
こうして夢を叶えられたのは彼女との日々が栄養になったからなのに。彼女との時間が僕を作った。どうしたらこの気持ちを再び届けられるだろう。すでにそんな資格はないと、頭では理解しているのだけれど。》