風薫る
「木戸さん……!」
「わあっ」
焦った声で私を呼んで、腕を伸ばした黒瀬君に強めに手首を引かれた。
姿勢が大きく崩れて、思わず声を上げる。
「わー!?」
結局上手くバランスを取れなくてたたらを踏んだ。
足がもつれてしまって、ぐるぐるよたよたしながら黒瀬君の方に倒れそうになる。
ぶつかる……!
「避けて黒瀬君ー!」
ぎゅう、と目を閉じて固い地面を待ち受けたんだけれど。
「……何でそうなるかな」
小さな呟きが耳元で落とされた。少し拗ねているみたいな声色。
とん、と軽い衝撃が来て、抱きとめられたことだけは閉じた目でも分かった。
そろりと目を開けると、当然目の前に黒瀬君が見えて。
「木戸さん、大丈夫?」
ものすごく至近距離に黒瀬君の顔があって固まった。
私を支えたまま、心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「だ、大丈夫……! ごめんね、ありがとう!」
「いえいえ。無事でよかった」
優しく笑った黒瀬君にもう一度お礼を言って、でも、と続けた。
「わあっ」
焦った声で私を呼んで、腕を伸ばした黒瀬君に強めに手首を引かれた。
姿勢が大きく崩れて、思わず声を上げる。
「わー!?」
結局上手くバランスを取れなくてたたらを踏んだ。
足がもつれてしまって、ぐるぐるよたよたしながら黒瀬君の方に倒れそうになる。
ぶつかる……!
「避けて黒瀬君ー!」
ぎゅう、と目を閉じて固い地面を待ち受けたんだけれど。
「……何でそうなるかな」
小さな呟きが耳元で落とされた。少し拗ねているみたいな声色。
とん、と軽い衝撃が来て、抱きとめられたことだけは閉じた目でも分かった。
そろりと目を開けると、当然目の前に黒瀬君が見えて。
「木戸さん、大丈夫?」
ものすごく至近距離に黒瀬君の顔があって固まった。
私を支えたまま、心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「だ、大丈夫……! ごめんね、ありがとう!」
「いえいえ。無事でよかった」
優しく笑った黒瀬君にもう一度お礼を言って、でも、と続けた。