風薫る
経緯を説明して欲しいと頼んでみる。


リズムって何のリズムか、とか気になるし。


「実はね、今日、友達に肩叩かれたときに、間違って黒瀬君って言っちゃって」

「俺とその人が似てるとか?」

「ううん、女子だよ」

「え!?」


衝撃の告白。


ちょっと待って欲しい。ええと、どこに間違える要素があるというのだろうか。


「叩き方が同じだったから……」


悔しそうな木戸さんに、余計に謎が深まった。


「そ、そうなんだ……?」


同じ叩き方って何。俺は日頃、そんな奇怪なリズムはとっていないよ。多分。


木戸さんによると、俺とその人では肩を叩くときのリズムに違いがあるらしい。


俺は、とん、とん、とゆっくり二回。

その人は、とんとん、速く二回。


今回は珍しく遅かったらしいけど、確かに間違えるのは困ると思う。


「うーん、そっか。それはリズム決めないとだねえ」

「でしょう」


随分と可愛い理由だったけど、なかなかに悩ましいお題だ。


改善策を見つけるのは大変そうだった。
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