風薫る
「木戸さん、で四回叩くとか?」

「私は黒瀬君、で五回叩くことになっちゃうから、揃わないかなあ」


揃わないし回数が多いし、この案は没。


「彩香、で三回は?」


姓が駄目なら名前だ。


聞いてみるも、木戸さんは首を振った。方向は横。


「紘、で二回になるから、それもちょっと……」


揃わないので没。二回は普通なので余計に意味がない。


「うーん、なかなか共通のものがないね」


二人とも難しい顔をして考え込む。


やっぱり、趣味が同じだからだろうか。

結構似てるというか、類似点があると思ってたんだけど、意外だ。


意味は別に込めなくてもいい気がしたけど、せっかくなので込めてみたい。


「栞、で三回は?」

「うーん、栞……」


あまり乗り気じゃないから変えた方がいい。


と、なると。


やっぱり、俺たちに共通するものといえばこれだろうか。


「読書、で三回は?」

「うん、いいと思う!」


提案に木戸さんはすぐさま頷いた。


しかし何やら問題点を発見したようで、でも、と困り顔だ。


何だろう。


目を瞬く俺の前で、木戸さんは何度も指折り数えている。
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