風薫る
*
よく図書室で見かける、背の小さな女子。
新書のコーナーから移動しつつ、ふわりと彼女が俺を呼ぶ。
「黒瀬君、ごめん、あれ……」
木戸さんも俺と同じで、俺が黒瀬というのだとは把握していたらしい。
木戸さん、と呼んだ俺を見て、黒瀬君と呼んでくれるようになった。
「うん、……」
本棚から取り出して木戸さんに渡そうとしたけど、大量の本は、今にもその両手から落ちそうで怖い。
「持とうか?」
見かねてそう言ってみると、木戸さんは首を横に振った。
「い、いいよ……! 大丈夫!」
そうは言われても、実際危なっかしいし、足元もふらついているし。
全部ハードカバーで、かなりの厚さと重さがあるから当然なんだけど、心配になる。
……ほんとに大丈夫かなあ。
ちらり、横目で確認すると、案の定、木戸さんは口をきつく結んでいた。
……強行突破しかないか。
仕方なく、半強制的に木戸さんの手から本の山を取る。
慌てて手を伸ばしてくるのを冷静に流した。
「駄目だよ、それ重いのに!」
「気にしない気にしない」
俺は男なので木戸さんよりは力があると思う。
持った本の山は割と重くなかった、というかこれくらい余裕だ。
「重くないよ。大丈夫だから」
よく図書室で見かける、背の小さな女子。
新書のコーナーから移動しつつ、ふわりと彼女が俺を呼ぶ。
「黒瀬君、ごめん、あれ……」
木戸さんも俺と同じで、俺が黒瀬というのだとは把握していたらしい。
木戸さん、と呼んだ俺を見て、黒瀬君と呼んでくれるようになった。
「うん、……」
本棚から取り出して木戸さんに渡そうとしたけど、大量の本は、今にもその両手から落ちそうで怖い。
「持とうか?」
見かねてそう言ってみると、木戸さんは首を横に振った。
「い、いいよ……! 大丈夫!」
そうは言われても、実際危なっかしいし、足元もふらついているし。
全部ハードカバーで、かなりの厚さと重さがあるから当然なんだけど、心配になる。
……ほんとに大丈夫かなあ。
ちらり、横目で確認すると、案の定、木戸さんは口をきつく結んでいた。
……強行突破しかないか。
仕方なく、半強制的に木戸さんの手から本の山を取る。
慌てて手を伸ばしてくるのを冷静に流した。
「駄目だよ、それ重いのに!」
「気にしない気にしない」
俺は男なので木戸さんよりは力があると思う。
持った本の山は割と重くなかった、というかこれくらい余裕だ。
「重くないよ。大丈夫だから」