風薫る
「今日は残るの?」


この学校には自習場所が多数設置されているので、学校に残って勉強する生徒は多い。


首を振る。


「ううん、私は家の方が落ち着くから」


私は人の気配で集中が乱れてしまうタチなのだ。


家の方がはかどるので、勉強は基本自宅でする。


テスト準備期間の放課後も、早く帰って早く始めるつもりだった。


「黒瀬君は?」


聞くと、うーん、と黒瀬君が口を開いた。


「俺は家だと怠けるから。学校派かな」


え、そうなんだ!?


「黒瀬君が怠けるって、なんだか想像できないんだけれど……」

「読書しちゃったり、なぜか掃除を始めてみたり、飽きたり疲れたりすると何となくうやむやにしちゃうんだ」


……なるほど。


その点学校なら人目があるからね、 勉強しなくちゃ、という気合いも入る。

放課後なら掃除はもうされてるしね。


好みがあるから、全く同じというわけにはいかない。

人それぞれってことだろう。


「頑張ろうね」

「うん。最終日にまた会おうね、木戸さん」

「うん。ご飯と図書館、すごく楽しみにしてる」

「俺も楽しみにしてる」


目を合わせて。


「それじゃあ、また」

「またね、黒瀬君」


笑い合う。


もうすぐテストが始まる。
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